国の経済産業省が指定した伝統的工芸品「天童将棋駒」の伝統工芸士・国井孝さんが、厚生労働省が選出する「卓越した技能者(現代の名工)」に選ばれました。国井さんは「天竜」(てんりゅう)の雅号をもつ職人で、文字が書かれた紙を当てずに将棋駒を彫り上げる「すかし彫り」の技を持つ、天童を代表する駒職人です。
83歳になった現在も第一線で活躍し、天童市のふるさと納税で「おまけ」としてプレゼントされている将棋駒ストラップは「どれだけ待ってもいいから欲しい!」と人気を博しています。
伝統工芸から最先端の工業技術まで、特にすぐれた技能を持つ「現代の名工」に県内から2人が選ばれました。「現代の名工」は、日本のものづくりの技術などを受け継いでいこうと、厚生労働省が、特に優れた技能を持つ職人や技術者を毎年表彰していて、今年は県内から2人が選ばれました。
将棋駒彫り師・国井孝さん(NHKニュースより)
このうち天童市の「将棋彫駒製作工」国井孝さん(83)は、「すかし彫り」とよばれる技法を持つ、全国でも数少ない職人です。数多いタイトル戦で国井さんの駒が使われるなど、将棋界の発展に貢献したとして評価されました。
上山市の「飲食物給仕人」佐藤幸子さん(89)は、旅館のおかみとして40年余り前、宿泊客の部屋で出すのが当たり前だった食事を、旅館内の料亭で提供する仕組みを初めて考案しました。これによって、従業員の負担を軽減したことなどが評価されました。
このうち、天童市の国井孝さんは、10代のころから70年に渡って将棋の駒の手彫りに従事してきました。駒に下書きをせずに彫り始める「すかし彫り」と呼ばれる技法の持ち主です。下書きをする通常の方法では1つの駒を彫るのに30分ほどかかりますが、国井さんはわずか5分ほどで完成させます。日本一の将棋の駒の産地・天童市のなかでも最高の駒と評価されています。9年前に羽生善治さんが18連覇を決めた王座戦など、多くのタイトル戦でも使われました。
厚生労働省は工芸や工業、調理など各分野で卓越した技能を持つ150人を2018年度の「現代の名工」に選んだと11日、発表した。表彰式は12日に東京都内のホテルで行われた。
本県からは天童将棋駒の彫師、国井孝(83)=天童市田鶴町2丁目、銘駒天竜彫代表=と上山市の日本の宿古窯創業者、佐藤幸子さん(89)=同市葉山、古窯副会長=が選ばれた。
現代の名工の表彰は1967年度から毎年1回行われ、表彰者は本年度を含め6346人となった。
特製台で駒を安定させ、印刀で切り込む。「王将」「飛車」と下書きした字母紙を使わない「すかし彫り」の技を持つ。5人しかいない天童将棋駒の伝統工芸士で、雅号は「天竜」。
小学5年の時、走り高跳びのけがから破傷風になり、右脚が不自由に。中学に入り近所の彫師に通い始め、卒業と同時に独立した。状況の夢は捨てたが、「足のけがで将棋駒に出会い、運命を感じた」。
「今出回っている彫り駒の98%以上は機械」という中、手彫り一筋で70年を迎えた。辞めようと思ったことはない」。後継者不足が気掛かりだ。自ら育成講座の講師を10年ほど務めたが、今も彫り続けているのは1人のみという。
ふるさと納税返礼の根付け駒の人気ぶりは衰えず、月300個を仕上げる忙しさ。それでも「機会にはできない心を刻み続ける」。
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