天童市で米油などを製造している三和油脂株式会社が、「米及び油糧米が創る新産業に係る研修開発プラットフォーム」を設立しました。油糧米(ゆりょうまい)は、米油などの原料となる米のことです。
この組織は「日本の農業、特に主食であるコメの生産が危機的な状況にある。そのような中、機能性成分を多く含む米油や米糠の需要が健康志向の高まりで拡大しているものの、油糧米の生産量が需要に対応できていない。そこで、行政、産業界や研究者など産学官が一丸になって新しい米食の潮流を創造する必要性がある」という趣旨のもとに設立されました。
米油製造・販売の三和油脂(天童市、山口與左衛門社長)と東北福祉大(仙台市)などは30日、米の生産が減少傾向にある中、産学官が連携し、油を搾るための「油糧米」の効率的な栽培、米や副産物などの有効活用、関連技術を研究するプラットホームを設立した。山形、宮城両県を含む全国から30の企業、大学、研究機関が参加している。
プラットホームは農林水産省の「知の集積と活用の場 産学官連携協議会」に設置された。農林水産・食品分野に異分野の知識や技術を導入して、革新的な技術シーズを生み出し、事業化・商品化に導いて国産農林水産物のバリューチェーン(価値の連鎖)形成に結びつける新たな仕組みだ。
三和油脂によると、人口減少や食生活の変化で、2007年に854万トンだった国内の主食用米生産量は17年に731万トンまで減った。米ぬかから搾られ、機能性成分を多く含む米油の需要は健康志向の高まりで拡大しているが、米ぬか不足により国内供給量の一部は輸入品で補われている。
協力工場を合わせ毎月5千トンの米ぬかを使う三和油脂にとっても「安定的な原材料の確保は課題」(山口社長)となっている。同社は米の生産・利用拡大を目指し、米粉・米ぬか入りパスタや山形大と連携してアレルゲンを含まないタンパク質の製造技術を開発してきた。今回はより大きな枠組みで、油糧米用となる高アミロース米の栽培から、胚乳、脱脂ぬかなどの食品への活用、油の抽出などに関係する装置・プロセスの開発までに取り組む。
この日、東北福祉大で設立総会が開かれ、プロデューサーを務める山口社長と鈴木康夫同大教授が趣旨を説明した。本県から山形大農学部や県農業総合研究センター、全農ライフサポートなどが名を連ね、大手のカルビー(東京)やグルテンフリーの新食品素材「米ゲル」を扱うヤンマーアグリイノベーション(大阪)もメンバーとなっている。
山口社長は「米ぬかや胚芽の天然栄養成分が含まれる米油はスーパーフードだ。日本の農業と国民の健康のため、しっかりと事業に取り組んでいく」としている。
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