全国トップクラスの実績を誇る天童市のふるさと納税事業について、地元紙・山形新聞がこれまでの経緯について紹介しました。
天童市に寄せられる「ふるさと納税」の勢いが止まらない。寄付額は2014年度の7億8000万円に続き、15年度は32億円(速報値)を突破した。ポータルサイト「ふるさとチョイス」の15年分の集計では、寄付額は全国4位、申込件数は2位の大ブレークぶり。秘密を探った。
14年春先。トップのひと言から始まった。「もらった分全部返してもいい」。どの自治体も「歳入確保」というこそばゆい理念にとらわれていた時期。民間出身の山本信治市長は返礼制度導入に際し、特産品PRを前面にした発想を打ち出した。選定に当たっては「安物はだめ、地元の良質な物を」と注文。目指すは天童ファンの獲得だ。職員に迷いはなくなった。
時期がずばりはまった。サクランボ目当ての寄付が、全国から雪崩を打って舞い込んだ。朝パソコンを立ちあげると、100、200の単位で注文が来ている。年間数十万円だった寄付額は、わずか2カ月で5千万円を突破した。やがて市議会定例会での補正予算措置は恒例になった。
ラインアップに海産物はない。「米沢牛」「だだちゃ豆」といった全国区も少ない。しかしレベルの高い果物や米、牛肉、地酒の食をはじめ、温泉宿泊券や将棋、木工品など地元の強みを総結集。トータル的に天童の魅力を発信している。
寄付者集めに放った矢は数え切れない。ふるさとチョイスへの掲載はもちろん、クレジットカード決済も導入した。全員にプレゼントする将棋駒の根付けは大好評で、製作が追い付かない。本年度から人気将棋漫画「3月のライオン」のグッズも特典に加えた。
ブレークの流れを完全に取り込んだのは、14年秋の「好評EKB(えくぼ)リンゴ」だ。降ひょう被害を受けたリンゴを返礼品に採用。ふるさと納税を活用した被災農家支援策として全国の注目集めた。
返礼品は地場産業の活性化に大きく貢献している。市は寄付額の約6割を返礼品(特典を含む)に設定。全てが地場産品であるため、寄付額32億円のうち19億円余りが市内で消費された計算になる。
効果は市役所業務にも及ぶ。返礼制度を始めた当時、市長公室長として指揮を執った新関茂副市長は「成功体験による市職員のスキルアップ」を挙げる。若手のアイデアを次々に引き出し、ふるさと納税の運営改善を図ってきた。「公務員の習性である前例踏襲を打ち破る意識改革につながった。本気で全国トップを目指してきた結果が数値として表れた」と解説する。
好調はいつまで? 他自治体も返礼品に頭をひねり競争は激化している。一方、ふるさと納税の全国実績は1500億円程度だが、市場規模となる控除限度額は2兆円と見込まれ、伸びしろは十分だ。
市は本年度、参加業者を24から30、返礼品も130から236に増やした。3月のライオングッズのほか、独自の特設サイトを開設。さらに果物狩りツアーを拡充し、果物にはお裾分け用の袋も付ける。放つ矢は尽きることがない。
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