成形合板の技術を日本で初めて活用し、高級家具の製作で知られる天童市の天童木工が、リオデジャネイロオリンピックで使われている卓球台の製造を請け負っていたことが、地元紙の山形新聞で取り上げられました。天童木工の公式サイトでは4月20日付で発表されていますが、新聞に載ったことで初めて知った、という方もたくさんいらっしゃると思います。
世界の大舞台に、山形県天童市という人口6万人ほどの地方都市も関わっているというのは、非常に感慨深いものがあります。
オリンピックで使われている天童木工が製作した卓球台(TUYニュースより)
熱戦が続くリオデジャネイロ五輪の卓球会場で、ひときわ存在感を放っているのが卓球台。特に目を引くのはエックスの形状をした木製の重厚な脚部だ。製作したのは天童木工(天童市、加藤昌宏社長)。国内外に知られる成形合板の高い技術が活用されている。
同社が、卓球台や遊具などを手掛ける三英(千葉県)から、脚部の製作を依頼されたのは2年半ほど前。木を曲げる技術を見込んでのことだった。
デザインは、ソニーのウォークマンなどを手掛けた工業デザイナーの澄川伸一さん。最初のデザインは「(脚部が)もっと薄くて細くて。6センチの厚みで試作してみたが揺れが止まらなかった」(天童木工の結城和男取締役営業本部部長)。卓球台は特に、選手がぶつかった際の振動を早く収めることが求められる。金属で補強したり、厚みを9センチまで膨らましてみたりと試行錯誤を重ねたが、ごつい脚部はデザイナーのイメージから遠く離れたものだった。
ようやく思うような試作品ができたのは昨年12月だった。ブナを薄くスライスした単板を58枚重ね、曲げてからカットし成形。厚さは8センチだが、曲線部をより鋭角にし、塗装で陰影を付けてシャープ感を出した。幅最大約2.3メートル、高さ約0.6メートルの二つの部品をパイプでつないで脚部にし、天板の枠も同社が製作。三英が製作した「レジュブルー」色の天板と組み合わせた五輪専用モデル「infinity(インフィニティー)」が誕生した。
直後に生産を開始。ブナは東日本大震災からの復興の意味を込めて、岩手県宮古市産を使用した。先に五輪出場選手の練習用に4台分納め、今年5月にリオ五輪・パラリンピック用の10台分を出荷した。結城部長は「卓球競技はもちろん注目している。ぜひ日本選手にメダルを取ってほしい」と話している。
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