天童市がコラボ展開している漫画「3月のライオン」の劇場版が現在公開されていますが、劇中の重要なシーンで、最高級の将棋駒「盛上駒(もりあげこま)」を手掛ける桜井和夫(さくらい かずお)さんと桜井亮(さくらい りょう)さん親子の将棋駒が使われています。そのエピソードについて、地元紙の山形新聞が3月26日(日)の紙面で紹介しています。
映画「3月のライオン」前編は3月18日(土)から、後編は「人間将棋」が行われる4月22日(土)から公開が始まります。イオンモール天童2階にあるイオンシネマ天童で上映されていますので、ぜひ、ご覧になってみてください。
JR天童駅となりの天童市観光情報センターに掲げられた桜井和夫さんの写真
将棋棋士の成長を描いた映画「3月のライオン」(前編が公開中)の撮影で、天童将棋駒職人の桜井和男さん(68)=天童市蔵増、号は掬水(きくすい)=と長男亮さん(40)=同、号は淘水(とうすい)=が手掛けた駒が使われた。装飾担当者が使用を熱望したという親子の技が、映画に力を与えている。
和男さんはタイトル戦で使われる最高級駒「盛り上げ駒」の名工として知られる。「映画の最初の場面は特別な駒を使いたい」。装を担当した渡辺大智さん(36)=東京都=は、和男さんに狙いを定めた。昨年冬に天童を訪れ、後進育成の授業をしていた和男さんに直接依頼。和男さんは渡辺さんの熱意にほだされ、快諾した。もともと原作の漫画への好奇心もあり、駒職人の仕事の広がりという点でも興味があったという。これまでに作った駒の中から、和男さん自身が映画に合う駒を選び、渡辺さんに託した。
冒頭の撮影が終わり、渡辺さんが駒を返しに桜井家を訪ねたのは天童で名人戦が行われていた昨年5月30日。和男さんに「実は今日の名人戦で、息子(亮さん)の駒が使われた」と聞き、渡辺さんは運命を感じたという。「亮さんの駒を最後のシーンで使えないか」と渡辺さんが申し出ると、桜井さん親子も「それはうれしい」と応じ、名人戦で使われた駒を提供することにした。
実際にどのように使われているかは映画を見てのお楽しみだが、渡辺さんによると、桜井さんの駒を現場に持っていくと、対局シーンなどを指導したプロ棋士はもちろん、役者たちも「これはいい駒ですね」と気付いていたという。
19歳の亮さんに駒職人の道を勧めた和男さんは「将棋駒産業はどちらかというと斜陽産業だった。先のことを考えると仕事としてどうなのだろうと考えることもあった」と明かす。だが、今は「伝統文化として絶やしてはいけない。(亮さんには)次世代、産地を担っていくという点でも期待したい」と信頼を寄せる。亮さんは「父はもともと天童に高級駒の技術を確立してきた人。すごみもある。仕事をすればするほど、父の駒のすごさが分かり、意欲がわいてくる」とその背中を追い掛ける。
映画では登場する親子の葛藤や愛情が物語に深みを与えている。二人は「そういう映画に私たち親子の駒が使われ、感慨深い」と語った。
父子の技、画に迫力 天童の桜井和男さん・亮さん 手掛けた将棋駒
映画「3月のライオン」で使用
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