天童市南部の高擶(たかだま)地域で、かつて国内有数の産地だったハッカ(ミント)を見つめ直そうという取り組みが始まりました。これは、天童市内の公民館単位で設立されている高擶地域づくり委員会が進めているもので、「ハッカの風再びプロジェクト」と名付けられています。
まずは、地域の人たちに知ってもらうため、市内の水田に自生していたハッカ(ミント)を公民館の花壇に植栽しました。ゆくゆくは、ハッカを使ったアロマオイルやスイーツをつくろう、という目標を掲げています。
天童市立高擶公民館に植えられたハッカ
ガムやあめの清涼感を出すハッカ。かつて天童市を含む本県が国内有数の産地だったのをご存じだろうか。全国一のブランド、北海道北見地方の「北見ハッカ」の礎を築いたのは、天童市高擶の屯田兵だった。ハッカ栽培の歴史に光を当てようと、高擶地域づくり委員会が取り組みを始めた。名付けて「ハッカの風再びプロジェクト」。まずは住民の関心を高めるため公民館で栽培をスタートし、ハッカ油を精製することになった。
同委メンバーの長谷川喜久さん(53)、佐藤善博さん(68)、柏蔵貞司さん(64)の3人がプロジェクトの中心だ。おととし、市主催講座で北見のハッカ産業の歴史を知った長谷川さん。「農家の嫁なのにその植物すら知らない」と衝撃を受けたが、同時に海を渡った天童のハッカに興味が湧いた。地元の郷土史家野口一雄さんに教えを請い、北見にも足を運んだ。
▽岡山、広島県から伝わった▽明治期に山形でブーム、輸出も▽旧高擶村の屯田兵石山伝次郎が永山村(現旭川市)に導入▽北見ハッカの草分けに―。調べるにつれ、奥深いストーリーに引き込まれた。地元の皇太神社には北海道の開拓風景を描いた絵馬が奉納され、天童のハッカ栽培・製造の様子をうかがえる絵馬が山形市に現存することも分かった。
そんな折、皇太神社の絵馬修復に取り組んでいた佐藤さんらが加わり、プロジェクトは動き出した。佐藤さんいわく「石山一家はハッカのほか、耕作不適地とされた米も北海道にもたらした。荒れた土地に古里の作物を根付かせた先人の精神性を伝えたい」。
現在、天童でハッカは栽培されていない。自生している2種類を市内の水田から採取し、高擶公民館の花壇に植えた。歴史を記した立て看板を作り、近く除幕式を行う予定。収穫、乾燥、蒸留、精製の工程を経てハッカ油にするまでを住民参加で進めたい考えだ。
プロジェクトでは、栽培を復活させるだけでなく、主成分メントール含有量などの機能性を調べ、新たな活用も探る。「高擶に根付く宝を生かしたアロマ、スイーツといった特産品にもつなげたい」と長谷川さん。柏倉さんは「加齢臭も消せるね」と笑い、ハッカのまち復活に向けた夢は広がる一方だ。
ハッカのまち復活へ 天童・高擶の委員会 栽培の歴史に再び光
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