国内屈指の家具メーカー天童木工(天童市)は、軟質のため使用が難しかったスギ材の家具を開発した。強度の弱さを同社得意の圧縮と合板を応用した新技術で克服。国内スギ材の利用が伸び悩み、里山の荒廃が問題化する中、同社の技術が注目を集め、全国の自治体から地場産のスギや間伐材を活用した家具の注文が相次いでいる。同社製品は輸入材に頼っているのが現状で、今後は国内針葉樹の利用拡大にシフトを図る。
デザイン性の高い家具は硬質のブナ、ナラなどを使うのが一般的。スギは繊維に空洞があるため曲げに耐える粘りが弱く、表面に傷がつきやすいことがネックとなっていた。丸太を組み合わせたようなスギの家具はあるが、本格的な家具の製造は前例がなく、県の補助金を活用し、3年前から開発を進めてきた。
スギを厚さ5ミリ程度の板にスライスし、強力な加温プレスで圧縮することで素材を硬化。表面に細かな切れ目を入れ、特殊な液剤を浸透させて耐久性を高めた。さらに、木目が縦、横の向後になるよう圧縮板を重ね、合板に仕上げている。板のスライスと圧縮には、それぞれ専用機を特注し、約1億円を投資。一連の技術は特許を申請している。
スギを使った家具は先月24〜27日、東京の展示会で発表。木目がくっきりと浮き上がった表面は、木材特有の柔らかさが際立ち、来場者から好評を得た。また、スギは乾燥の必要がなく、産地も選ばないことから、スギやヒノキの地産地消を目指す自治体から問い合わせが殺到。議場の演題や議員席、図書館の家具などの受注が相次ぎ、工場はフル稼働の状態になっている。
開発に当たった西塚直臣取締役製造本部長は「国内の森林を保全する理念を基に、技術が完成した。当社の新しいスタイルとして広く普及を図りたい」と話す。高級車に使われている木製ステアリングとしての提案など、さまざまな応用も計画中。一般向け家具は、椅子が3万円台から、座卓が6万円台からで価格を抑えた設定になっている。
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