5月23日に正式に発表されたパイオニアレッドウィングスの廃部について、地元紙・山形新聞が2日間に分けて特集記事を掲載しました。
バレーボール女子のパイオニアレッドウィングスはことし4月の下部との入れ替え戦で敗れ、14シーズンにわたり在籍したプレミアリーグからの降格が決定的となった。本来であれば再昇格をめざし、選手の契約更改などが行われる5月中旬。突然、選手たちに廃部方針が通告された。運営する東北パイオニア(天童市)は廃部に至った理由について「経営上の問題」とし、降格が引き金になったのではないと強調した。
東北パイオニアの親会社パイオニアは世界同時不況などの影響で業績が悪化し、抜本的な経営計画に取り組んできた。昨年にはグループ全体で約800人の人員削減策を公表し、東北パイオニアからは約130人の正社員が早期退職に応募したとみられる。今月にはパイオニアが不振のAV(音響・映像)機器事業を売却する方向で検討していることが分かった。
グループ全体で業績回復を目指す中、東北パイオニアがバレーボール部にトップレベルを維持する規模の予算を投じ続けることは難しくなっていた。こうした状況がチームの戦力低下に直結。2009年に持ち上がったそんぞくもんだいの余波で主力の一部が退団し、その後は即戦力の補強ができず下位に低迷。ことし4月の入れ替え戦の敗戦を経て、ついに廃部が現実のものとなってしまった。
本県スポーツ界をけん引してきた存在だっただけに関係者が受けた衝撃は大きく、その影響に危機感を募らせる。例えば、国体では昨年を含めて成年女子で2度の優勝を飾るなど本県の天皇杯順位を押し上げる得点源だった。菅原和敏県バレーボール協会長は「代わりに国体出場を目指す成年女子チームは白紙。至急、検討しなければならないが、本番で活躍できるかどうか」とため息をつく。
「国体の練習会などを通じ、高校生がレッドウィングスの胸を借りる機会は貴重だった」と話すのは山形商業高女子バレー部の結城一秀監督。チームの存在自体が小中高生や指導者の意欲を高め、各地で開くバレー教室なども競技人口や競技力の維持に一定の成果を挙げていた。結城監督は「本県バレー界に穴が開いてしまう」と悲痛な声を上げる。
名門の廃部は企業スポーツの難しさをあらためて浮き彫りにした。一企業による運営は、チームの興廃が経営状況に左右されてしまう危うさを常にはらんでいる。
一方、本県には従来の企業チームとは一線を画す二つの組織がある。サッカーJ2・モンテディオ山形と、今季からバスケットボールNBLの下部リーグNBDLに参入する男子チーム「パスラボ山形ワイヴァンズ」。観客数を一人でも増やし、その入場料を収益の柱にすることで、強化につなげていくというコンセプトが共通している。より地域に根差し、愛着を持ってもらうことこそ、チーム存続に欠かせない要素だ。
運営側は常にファン目線に立って魅力向上に努めなければいけないし、対する県民も地域が誇るチームとして認識し、支えていこうという機運を盛り上げていく必要がある。これ以上、本県からスポーツの灯を消してはならない。(報道部・五十嵐聡)
[山形新聞]パイオニア廃部の衝撃 経営状況 荒廃に直結
(下)企業スポーツの厳しさ
本県バレー界に穴
地域の支え不可欠
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