成形合板の技術を日本で初めて活用し、高級家具の製作で知られる山形県天童市の天童木工の製品が、2019年度グッドデザイン賞に選ばれました。受賞したのは、松橋孝之 氏がデザインした椅子「bambi」です。これは、スギやヒノキなどの軟質針葉樹の比重(強度)を広葉樹同等まで高められる天童木工の新しい技術「Roll Press Wood(RPW)」の活用と、国産針葉樹材の可能性の拡大を目指して開発されたものです。
審査委員からは
木材活用という観点からスギ材を圧縮技術によって広葉樹のように使用している点が、まず大きく評価された。座り心地、耐久性の面からいっても申し分ない完成度だと感じられた。構造からくる前脚の付き方は、テーブルの脚にもあたりにくい上、この椅子の特徴的でユニークな佇まいをかたちづくっている。と評価され、グッドデザイン賞に選ばれました。
2019年度グッドデザイン賞を受賞した「bambi」(天童木工公式サイトより)
日本デザイン振興会(東京)は2日、2019年度のグッドデザイン賞を発表し、本県からは5社5件が選ばれた。大賞、特別賞候補のグッドデザイン・ベスト100の該当はなかった。グッドデザイン・ロングライフデザイン賞にも1社1件が入った。 天童木工(天童市)のいす「bambi(バンビ)F-3249」は、軟質の針葉樹を圧密加工により強度を高める「ロールプレスウッド」技術で、杉材では不可能だったスリムで軽快な形状を実現。座り心地、耐久性が申し分ない点も評価された。
工芸品のような見た目で家電製品に近い感覚で使える木質ペレットストーブ「OU(オウ)」は山本製作所(同)製。多くの安全装置を備えて機能性を確保し、山形鋳物も採用。繊細で美しい鋳肌とシンプルな造形が生活に溶け込み、長年使用しても劣化しない耐久性も。
上山温泉にある築150年の旅籠(はたご)を住宅にリノベーションした井上貴詞建築設計事務所(山形市)の住宅「湯守の旅籠」。旧羽州街道沿いの顔として再生し、古民家の良さを残しつつ新たな間取りに変更。施主やその友人、地元学生らが加わって改修し、街の活性化にも寄与した。
空間芸術研究所(同)の事務所併用住宅「六日町の町屋」は山形市薬師町の国分寺薬師堂に近く、周辺の歴史や自然と調和しながら、細長い敷地に格子を設けた外観で仕上げ、近世の町屋のような構成になった。光や風を隅々まで届けて快適な環境も生んでいる。
セミオーダー住宅「モデルプラン」で受賞したカネカ(金山町)は金山杉を使い、木の向きや節の見せ方、木目の表情も吟味した。化粧材と構造材をバランスよく配し、自社山林の杉を使用しコストも削減。一貫した生産システムが評価された。
天童木工は「低座イスS-5016」でも、長年支持されているデザインを顕彰するロングライフデザイン賞を受けた。無理なく立ち上がれ、クッションは背中や腰に負担が掛からない。「世界で最も美しいいすに値する」とされた。
本年度のグッドデザイン賞は全国で4772件の応募があり、940社の1420件が選ばれた。大賞、特別賞は今月31日に発表される。
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