新型コロナウイルス感染症の拡大で休業を余儀なくされた天童温泉を支援しようと、王将果樹園を運営する山形県天童市の「やまがたさくらんぼファーム」が、ホテル旅館の従業員をさくらんぼの収穫作業のために雇用しました。天童温泉とおなじく、天童市内の観光果樹園も2月に入ってから軒並み予約がキャンセルになり、今年の観光客は厳しい状況になっているため、通信販売でなんとか乗り切ろうとしています。
天童市では、観光果樹園でもぎとりされるハズだったさくらんぼを、ふるさと納税の返礼品として採用しました。贈答用のさくらんぼよりも少ない寄附額で選ぶことができ、天童温泉と観光果樹園の両方を支援することができます。
観光果樹園の自粛が相次ぐ中、天童市では休業中の旅館やホテルの従業員が人手不足の園地で働く、新しい取組みが始まりました。
繁忙期で人出が欲しい果樹園で働くのは、営業自粛中の旅館の従業員です。慣れない手つきながらも、さくらんぼの摘果作業にいそしんでいます。この取り組みは、天童市で果樹園を営む「やまがたさくらんぼファーム」と、天童温泉の若手経営者らでつくる旅行会社「DMC天童温泉」が企画しました。
人手不足の農業と休業中のホテルマン、両社のニーズが合致し、農業と観光のタッグが実現しました。
来月中旬からは、いよいよさくらんぼの収穫も始まります。ここで収穫したさくらんぼは、天童市のふるさと納税の返礼品としても扱われるという事です。
一方こちらは天童市の果樹園です。人手不足解消のため、現在営業を休止している天童温泉旅館の従業員5人を今月から一時的に雇用しています。果樹園を運営するやまがたさくらんぼファームの矢萩美智(やはぎ よしとも)社長は、さくらんぼの出荷が最盛期を迎える来月下旬には、さらに50人を天童温泉の従業員などから雇用したいとしています。
その一方で、先週土曜日から始まるはずだったハウス栽培でのさくらんぼ狩りや直売は、コロナウイルスの感染防止のため、当面のあいだ中止に。去年9万人がさくらんぼ狩りに訪れた天童市ですが、市内17の観光果樹園からは今年度のさくらんぼ狩りの営業について、あきらめの声があがっているということです。
このため天童市は、観光果樹園のさくらんぼをふるさと納税の返礼品にしました。8000円の寄附で、さくらんぼ狩り用に栽培された佐藤錦1キロ分、一方1万円で贈答用の佐藤錦か紅秀峰を受け取ることができます。
返礼品のさくらんぼは、ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」で来月10日までに寄附すると受け取ることができます。
新型コロナウイルスの影響で打撃を受ける天童温泉の旅館従業員が、人手不足に悩む天童市内の果樹園で助っ人として働き始めた。彼らが収穫するサクランボは同市のふるさと納税特別返礼品「おもてなしの笑顔が咲くらんぼ」としてリストアップ。逆境を契機に果樹園と旅館のほか、旅行商品の企画販売を行うDMC天童温泉や行政も連携し、“コロナ時代”を生きる地域産業に示唆を与える。
天童温泉の各旅館は休業を余儀なくされ、従業員は自宅待機が続く。一方のサクランボ農家は収穫期の慢性的な人手不足に加え、現状では県外からのアルバイト確保も見込めない。農業生産法人「やまがたさくらんぼファーム」(同市、矢萩美智社長)では観光果樹園のオープンを見送り、今季は通信販売のみと決めたものの、収穫には新たな労働力が必要となる。
「目的は互いの雇用の維持。この仕組みがうまくいけば、どこでも抱える労働力問題の参考になるかもしれない」。矢萩社長が以前から思案していた連携構想をDMC天童温泉(山口敦史社長)や旅館と具体化させ、市も一端に協力した。
「天童アライアンス+ON(プラスオン)」と名付けた枠組みが今月18日から、テストケースとして始動した。副業を認めた旅館側の提案を受け、希望した調理師や接客担当者、実習生らの従業員5人が、観光業界の需要が回復するまでの期間、同ファームの一員となった。
従業員らはいずれも先行きの見えない日々を過ごしていたといい、安達智規さん(50)=寒河江市ほなみ=は「家の中で掃除、洗濯を繰り返し、日ごと不安になった。外で体を動かして人手になるのはいい」と語り、梅津広一さん(49)=東根市長瀞=は「この経験も本来の仕事に役立てられそう。少しでも力になれれば」と汗を流す。
来館客をもてなしてきた旅館の従業員たち。収穫するサクランボが返礼品となる市のふるさと納税は、18日から寄付受け付けが始まった。新関晴久さん(59)=山形市五十鈴=は「泊まりに来てくれた人たちへの心遣いを今度はサクランボに込め、喜んでもらえるように作業に当たりたい」と意欲的に語っていた。
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