パイオニアレッドウィングスで栄養トレーナーを務めている山口喜代美(やまぐち・きよみ)さんが、「児童生徒のための食事調整とメンタルケア」と題して講演会を行いました。これは天童・東村山地区PTA連合会が平成20年度の研修会として開催したもので、スライドや資料、パイオニアでの仕事の様子などを説明しながら90分間、食事の大切さについて紹介しました。
冒頭であいさつするパイオニア・山口喜代美さん |
シリエ選手とのエピソードを話す山口喜代美さん |
バレーボール女子のキューバ代表チームが北京オリンピック直前合宿のために7月14日から7月28日まで天童を訪れていましたが、山口さんは食事のサポートを行っていたそうです。選手やスタッフみんなから「ママ」と呼ばれ慕われましたが、中でもNo.15のシリエ選手とは、山口さんの息子さんとシリエ選手の彼氏がどちらも野球をしていてポジションがセンター8番という共通点から非常に親しくなり、個人的にプレゼントをいただくほどの仲になったそうです。
短い時間のなかでいろいろ教えてくださった中からいくつかピックアップします。
<パイオニアでの仕事や選手の様子について>
- パイオニアの選手は、朝・夕はクラブハウスで、昼は体育館で食事を取っている。競技力向上のためには、トレーニング終了後30分以内に食事を取るのが常識。
- コーチから1週間分のトレーニング内容を事前に教えてもらい、それによって食事のメニューを組んでいる。牛肉は鉄分が多いので、持久系のトレーニングをする際に食べる。鳥肉はタンパク質が多いので、ウェイトトレーニングをする際に食べる。
- タンパク質は体重1kgあたり2gで計算して取るようにしている。足りない分はプロテインを利用しているが、海外から取り寄せたりするのではなく、普通に市販されているものを地元のスポーツ用品店から取り寄せている。
- 身長、体重、ポジションによって摂取カロリーが異なるので、選手1人1人について、毎日の食事のなかで各栄養素が満たされているかどうかをチェックしている。
- 食事は監督、コーチ、選手みんな一緒に食べている。メニューも同じ。監督だから1人だけ「いいもの」を食べている、ということはない。
- パイオニアの選手は納豆好きが多い。特に大きい粒のものが人気。栗原恵(くりはら・めぐみ)選手は「ひっぱりうどん」が好物。アテネオリンピック前の合宿では、吉原知子(よしはら・ともこ)選手から「ひきわり納豆しかない、粒の大きい納豆が食べたい」ということで、天童から納豆をダンボール箱で送ったこともあるそうです。
<食事の大切さについて>
- 「食事」「トレーニング」「休養」のバランスが最も大事で、このバランスが崩れると、アスリートならケガをしたり、普通の人なら生活習慣病になったりする。
- 「早寝、早起き、朝ごはん」がさかんに叫ばれているが、どうして「晩ごはん」ではなくて「朝ごはん」かといえば、脳のエネルギー源が炭水化物(糖質)しかないから。朝食を食べることで賢くなれる。
- 食事は1人だけで食べるのではなく、みんなで食べることが大事。コミュニケーションを図ることができるし、食べる様子を通して心身のチェックをすることができる。パイオニアの杉本早希(すぎもと・さき)選手は体に痛みがあると食欲がなくなったり、小濱ゆみ選手は精神的に不安定な状況だと過食気味になったりする傾向があるそうです。こういうことは、普段から一緒に食事をして、お互いによく見ていてはじめて気づくものだそうです。
- 食べておいしいものばかりを口にしていると、20〜30年後に必ず影響が出てくる。体に良いものを食べなければならない。小・中学生のときに清涼飲料水やジャンクフードばかりを食べていると、早ければ10年後には骨密度の低下がみられるようになる。過度な運動などによって一時的に骨密度の低下が起きても、普通の人なら食事と休養で改善される。しかし、そういう人たちは体質的にカルシウムの吸収そのものが良くないため、骨密度の改善が見られず、骨折しやすくなることで結果的に選手生命を縮めることになる。どうすればそういう人たちの選手生命を延ばすことができるかが、山口さんのこれからの課題だそうです。
- リンはカルシウムの摂取を妨げる。清涼飲料水や冷凍食品に多く入っているため、子どもたちだけで生活する時間が長くなる夏休み期間中は気をつけなければならない。
- 清涼飲料水を運動後に取ることはまったく問題ない。ただし、水の代わりに飲むことはダメ。コーラで角砂糖24ヶ、スポーツドリンクでも12ヶ程度入っている。運動時に、薄めた状態でこまめに飲むのが良い。
- 山形の郷土食はすばらしい。いも煮は、炭水化物、タンパク質、野菜といったものを一度に取ることができる。イナゴ100gと牛肉100gを比べると、タンパク質の量は同じ。しかも、牛肉にはないカルシウムを取ることができる。菊の花の酢の物は、カリウムやビタミンC、クエン酸を取ることができ、今の季節に食べることは理にかなっている。
教員生活で最初に受け持った子どもたちが今年で42歳前後になるそうで、この日の参加者とダブって見えたところがあったようです。ご自身の母親業が一区切りつくこともあって、山口喜代美さんは「子育ては期間限定、一生続く訳ではない、今やるしかない、朝ごはんをつくって食べさせるのがお母さんの仕事」と、当時の子どもたちに言い残したことを伝えようとするかのように、少しウルッと来ながらも力説していました。
- (関連ページ)
- ■天童のニュース:パイオニアレッドウィングス
- http://www.ikechang.com/news/pioneer.html
- ■パイオニア、キューバ代表チームと公開練習試合 (2008.07.21)
- http://www.ikechang.com/news/2008/news0807j4a.html
- ■パイオニア、山口喜代美さんが寺津小で講演会 (2006.10.15)
- http://www.ikechang.com/news/2006/news0610j3.html#061015
- ■パイオニア、強さの秘密は山形の郷土料理? (2006.05.17)
- http://www.ikechang.com/news/2006/news0605j3.html#060517